ジャングル黒べえ
*この文章中での「てんコミ」は、ジャングル黒べえが収録されたてんとう虫コミックス「バケルくん」2巻のことを指します。
いよいよ今月の配本で、ジャングル黒べえが発売された。
実に21年ぶりの復活だ。
私はてんとう虫コミックス版の「バケルくん」2巻にカップリングで収録されたジャングル黒べえしか読んだことがなかった。
そのため、こうやってまとまった形で読むのは初めてということになる。
この作品は、アニメ先行企画であるため乗り切れなかったとF先生は語っておられたが、それでもさすがはF先生といったところか、一話ごとの完成度は決して低くないと思う。
てんコミには、第一話として「ウラウラベッカンコ」が収録されていた。
この第一話は、しし男と黒べえの出会いがセリフでしか語られていないため、イマイチ第一話という感じがしなかった。小学5年生版の第一話「ピリミーの黒べえ」も同様であった。
小学4年生版第一話「黒べえがやってきた」は、黒べえとの出会いがちゃんと描写されているため、この話が一番第一話らしい感じがする。
この話のあらすじを紹介してみる。
主人公しし男は、鳥の巣箱を自分の家の庭に置いて、1週間以内に鳥が入ってくるか来ないか、という賭けをタイガーとする。しかし、期限が迫ってきても一向に鳥がくる気配がない。
ここでしし男が「犬小屋を改造して巣箱にするということが、そもそもむちゃな思いつきだったんだよな。」というセリフを言う。
実はこのセリフが落ちにつながっているのだ。
(ネタバレ注意!ネタバレ箇所は反転させておきます)
その箱に何やら羽のような物が見えた。しし男は鳥が来たんだ!と喜ぶ。
しかし、それは鳥ではなく黒べえだったのだ。
ひょんなことからしし男は、黒べえを助けた恩人ということになってしまう。
黒べえは、恩返しということで魔法を使って鳥を巣箱入れてあげようと言う。
そして黒べえが魔法を使った途端、何かが鳥小屋の中に飛び込んで行った。
しかしそれはなんと犬だった というオチだ。
先ほどのセリフと組み合わせた見事なオチだったと個人的には思ったのだが、FFランドにもてんコミにも収録されていないところを見ると、F先生自身が気に入られてなかったのか、あるいは編集が適当に決めただけなのか。真相はわからないが、こういう面白い話が収録されていなかったのは実に残念なことだ。
まあ、F全集でこうして収録されたのだからよしとするか。
5年生第一話の「ピリミーの黒べえ」では、黒べえの見ているテレビにドラえもんが映っていた。この作品が描かれた年は1973年。一般人が知っているテレ朝版のドラえもんではなく、日テレ版のドラえもんが放映されていた時期だ。
1973年当時は、明らかにドラえもんよりもオバQの方がメジャーだったはずだ。にもかかわらず、オバQではなくドラえもんが放映されているシーンが描かれている。
新オバQがこの時期に放映されていなかった、というのもあるだろうが、メジャーであるオバQを描かずにドラえもんを描いたということは、やはり日テレ版のドラえもんに大きな期待をしていたのではないだろうか。
何かと失敗作だと言われることの多い日テレ版ドラえもん。いつか実物を見てみたいものだ。
「黒べえお手伝い」は、てんコミにも収録されている話だ。
黒べえがある家に、アルバイトのお手伝いさんとして行く話だ。
しかし、やはり例のごとく家の中を引っかきまわしてしまう。掃除機で掃除をしてくれ、と頼まれるのだが、「能率悪い!」と言ってパオパオに家の物をなんでもかんでも吸い込ませてしまう。
家の中の物を全て吸い込んでしまって、丸々と太ったパオパオが実にかわいらしい。
洗濯を頼まれて、「真っ白になるまで丁寧に」と頼まれた黒べえだが、間違えてこの家の奥さんの髪の毛と洋服を真っ白にしてしまうというシーンがある。
なかなか衝撃的で面白いシーンだ。しかし、てんコミでは洋服も髪の毛もなぜか元のままなのだ。(おそらく単なる印刷ミスだろう)
てんコミを最初に読んだ時は、この奥さんは何を怒っているのだろうと思ったものだが、今回の全集でその悩みがようやく解決した。
来月はいよいよ第一期の最終配本だ。
ドラえもん、パーマン、魔美の三冊の配本で、月報の次回配本予告には既に表紙絵が掲載されている。
パーマン、魔美は来月で完結となる。